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小動物臨床における
がん治療第4の選択肢
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第4回 AVECS 長野大会の様子
当研究会は、欧州において一部の腫瘍に対する標準治療の一つとして位置づけられている電気化学療法(electrochemotherapy:ECT)の国内普及と、獣医療領域における臨床研究の推進を目的として設立されました。
日本国内では、ECTを実施できる施設はいまだ限られており、適応判断、治療手技、安全管理を含めた診療体制の標準化が重要な課題となっています。当研究会では、全国の臨床獣医師との連携を通じて、治療プロトコルの整備、安全性の検証、症例経験および臨床データの集積を進めています。
ECTは、適切な知識と技術に基づいて実施されることで、外科治療、化学療法、放射線治療に続く「がん治療の第4の選択肢」として、より多くの症例に貢献し得る治療法です。私たちは、動物とご家族の大切な時間を守る新たな治療選択肢として、ECTの発展と普及に努めてまいります。
電気化学療法(Electrochemotherapy:ECT)という言葉が、まだ日本の獣医療の現場に存在していなかった頃のことです。海外の論文や国際学会では、この治療法が着実に評価を高め、すでに臨床現場で実装され始めていました。その動向に私は強い可能性を感じ、その思いは日を追うごとに増していきました。そして2016年7月、「電気化学療法の実際を自分の目で確かめなければならない」との思いに至り、イタリアの友人の病院を訪れました。
現地で目の当たりにした電気化学療法の治療効果は、私の想像をはるかに超えるものでした。腫瘍制御における確かな有効性、局所治療としての完成度、そして適切に実施された際の安全性。そのすべてに強い衝撃と深い感動を覚えたことを、今でも鮮明に記憶しています。帰国後、私は迷うことなく電気化学療法機器を導入し、日本での臨床応用を開始しました。
しかし当時、電気化学療法を学ぶための体系的な教育プログラムや、明確なガイドラインは存在していませんでした。適応の判断や手技の細部については、イタリアの指導医と連絡を取りながら、一例一例を慎重に積み重ねていくほかありませんでした。その過程で、副作用が強く出てしまった症例も経験し、電気化学療法が秘める大きな可能性と同時に、「正しく学ばなければならない治療である」という厳しい現実を痛感しました。
その後、アメリカでの複数回にわたる研修を通じて、理論的背景と手技の標準化を体系的に学び、治療成績は次第に安定し、副作用も大きく減少していきました。この経験を通じて私が確信したのは、電気化学療法は先進的であるがゆえに、独学や模倣で行うべき治療では決してない、という事実です。
電気化学療法は、小動物臨床において「外科治療」「化学療法」「放射線治療」という従来の三大治療に並び、あるいはそれらを補完しながら、第四の治療の柱となり得る可能性を秘めた治療法であると考えています。適切に用いれば、これまで治療選択肢が限られていた症例に対しても、新たな治療の道を示すことができます。
知識と技術を共有し、同じ過ちを繰り返さず、そして副作用によって苦しむ動物を1例でも減らしたい。その強い思いから、本研究会を設立しました。本研究会は、電気化学療法を正しく学び、臨床現場で安全かつ効果的に実践するための学びの場であり、経験とデータを率直に共有できる場であることを目指しています。電気化学療法に挑戦するすべての獣医師にとって、本研究会が確かな知識と技術を身につけるための拠点となることを、心より願っています。
公益財団法人 日本小動物医療センター附属
日本小動物がんセンター センター長
アジア獣医電気化学療法研究会 会長
小林哲也